今回は美術館やギャラリーで展示されるような写真(写真集)についてのお話です(商業写真やSNS写真などについては言及しません)。これからどのような写真が残るのか・価値があるとされるのか、「そういう意見もあるかー」という感じで聞いていただけますと幸いです。
まず、作家性がこれまで以上に問われるでしょう。では作家性と何か。ここではストーリー性、オリジナル性、作家のこだわり、他の人にはない着眼点、撮影者の「まなざし」などと考えてください。少なくともここ10年の写真の流れを追うと、年々それが強くなっているように感じます。
筆者はこれはグローバリズムや社会の画一化が一因と考えます。グローバリズムや社会の画一化は効率性、合理性を追求した結果と言えます。それに対して逆に非効率なもの、非合理なもの、意味不明なものに価値を見出す動きがあります。この動きは規模や性質の違いこそあれ、政治、経済、文化、日常生活それぞれに見られます。現在、日常生活においては、多くの人が一定の質のものを安価で早く簡単にたくさん入手できる、作れる時代です。ただその恩恵の一方で、同じようなものが氾濫しはじめると「疑問を持つ」「飽きてくる」のが人の性です。均質なものが普及し、それに満足する人がいる一方で、そうではないもの、例えば、手作りのもの、一点物の品、品質が良く他所では再現できないもの、特定の地域にしかないもの、そこでしかできないものなどに興味を持つ人が増えている印象です。写真も同様で、作家にしても鑑賞者にしても、画一的均質的ではなく、より作家性が強いものを求めるようになってきているのだろう思います。
強い作家性が求められるという傾向は生成AIが話題になった頃から、つまり2、3年程前から顕著です。おそらくこの流れはさらに強くなっていくでしょう。それは生成AIが上述した画一化均質化に拍車をかけているからです。現時点の生成AIでもプロンプトを入力しさえすればそれなりの文章、絵画、映像を作ってくれます。提示されるもののクオリティーはこれから更に上がっていくと予測できます。ある程度のところまで進化し違和感が限りなく薄くなると、取って代わられるものが増えてくるでしょう。その時、生成AIでは作れないもの、人にしか作れないもの、人だから作れるもの、一言でいうと作家性が強く表れているものは尚も価値があるとみなされる可能性は高いです。写真をうまく撮る必要はなくなり、それよりも「写真を使って何を表したいか」という作家としての面が大事であると思います。例えば、扱うテーマによっては、構成上、ピンぼけ写真やブレ写真などパッと見「ん?」という写真が相応しく、うまい写真が却って邪魔になる時があります(ちなみにその理由は、パッと見「ん?」の写真の方が情報を多く含むことがあるからです)。
そして、重要なのは写真に「力」があること。これは説明できる場合・推測できる場合もありますが、よくわからない場合もあります。「なぜかわからないけど気になる」「一回といわずまた見たくなる」といったように。ともあれ人を引きつける「力」を持った写真であることは必須でしょう。
また、それだけでは不十分で以下に述べる3つのどれかを満たす必要があるのではないかと思います。
①時代性。時代によって興味を持たれるもの、求められるものが変わります。その時の風潮に合ったもの、少し先取りものであることは大切でしょう。ただ、先取りし過ぎはついて来れる人がほとんどいなくなってしまうので要注意と思います。
②撮影者・制作者の人物性。ものとしての写真だけではなく、誰が撮ったのか、制作者の人柄はどういう感じかという、撮影者・制作者自体にも興味を持たれるようになるでしょう。鑑賞者が写真と撮影者・制作者の両方を見て「ああー、なるほど」と納得できる感覚が尊重されるようになってくるのではと思います。そのため「写真からその人の人となりを感じられる」写真はこれからも関心を持たれると思います。撮影者・制作者の視点からすると、作品作りにおいて、自分と向き合い作品にどれだけ己というものを込められたかがより重要になってくると言えます。これも抽象的すぎる、あるいは難解すぎると、理解されなかったり誤解されたりする可能性が高いので、匙加減は大事です。
③社会にとっての意義。現在、あるいは未来において有効なものかどうか、です。「力」のある写真は見た人の意識に影響を与えます。気分を明るく元気させるものもあれば、逆に所謂ネガティブな感情を抱かせるものもあります。「力」自体に善悪、ポジティブネガティブといった分類はありませんから、どちらもあり得るのです。放っておくとネガティブな方へ向かいがちな人が多い昨今です。世相を見ると、明るい方も増えてはいますが、そうでない方がこれからより増えていくように感じられます。そのような社会の方向性を見るに、人の意識が前向きになるものや冷静になれるもの、また現状を理解する助けになるものや気づきを得られるものが求められるのではないでしょうか。
以上、写真のこれからについて、でした。これはあくまで私見です。疑問や反対意見があるでしょうし、あって当然と思います。
参考意見として楽しんでいただけたら嬉しいです。